11,治療のつらさ

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さあ、これまでは、闘病の中で見つけだした

ほのかな光の部分をお話しましたが、やはり闘病。

病状や治療は、かなりつらいものでした。(今もいろいろありますが・・)

私に限らず、長いあいだ治療するようになる人たちの苦しみは、

言葉で表現しきれない物です。

 一見 元気そうに見える入院患者さんに糖尿病の方などがよくあげられます。

「痛いところや苦しい所は、ないの?」

よく新しく入ってきた患者さんが糖尿病の方のかたに聞きます。

すると たしかに今激痛とか今苦しいとすぐこらえられるような症状がない為、

「それは、ないけど・・毎日の食事制限や検査がつらくて・・・」 とその患者さんが、答えます。

すると入院経験の浅い方は、「食事と検査くらいじゃあ いいわね」 と言います。

 

でも、違うのです。

それは、私も自分の闘病が長くなり数々の経験をし、

多くの患者さんとの出会えたことで、真から分かって来た事でした。

 

まず、生活までが規制され管理された食事は、そりゃあ 1週間は、そこそこ我慢ができます。

でも直らない病気の人は、退院したとしても これが一生続くのです。

血糖値を気にしながら大きく自由を奪われる生活

それをうっかり守り忘れたら命の危機に遭ってしまうという不安

そして 動くことが出来る体でありながら狭いカーテンで仕切られたベット上での生活をしいられ

その上 入院の為 職を失う人 復帰しても長い休みの為に職場にいずらくなる人

 

 

その人達には、病院をでれば、そう言う大きな問題が待っているのです。

小さい子供を残し入院する人もいる。

 主婦であれば、その人の入院がきっかけで、大きく家計に負担がかかってしまうこともあります。

そのストレスは、本当に本当に大きく本人に家族に襲いかかります。

 

ある日

「急遽 今日だけは、仕事に行かせて下さい。そうしないともう収入がなくってしまうんです」 

と頼む患者さんに 

「今日は、担当の先生がお休みで、外出届けが出せないんです。だからダメなんです。」

と答える看護士さん。

確かに看護士さんも先生も本当に忙しく大変なんです。それは、よく分かります。

でもこんな時 ちょっとした融通が、きかないものでしょうか・・

本当に不条理に思えました。病院やその担当者によっても考え方や対応は、違うでしょうが、

こういった事態をたびたび見聞きし、

忙しさや 患者と医者=弱者と賢者 というイメージが患者の立場を、

生活を、なんとなく追いやってしまっている そんな風に感じました。

 

最近は、インフォームドコンセントや、セカンドオピニオンが当たり前の時代になったといいますが、

まだまだ命を預けるお医者様の顔色をうかがいながらの生活を

送らなければならない人は、沢山いると思います。

 

 また検査は、それが、長く続く事で、その苦しみが、驚くほど増します。

普通は大したことのない血液検査でさえ 長いこと続くと血管がこわれぎみになり

それは、痛みを共なう物になります。血管に針をさすだけで、血液がもれ、腫れ上がり あざになります。

こうなると もう数カ所さして、どの血管にさしてもうまく行かず、

そのたび患者は、悲鳴を上げる思いになるのです。

 

でも忙しい看護士さん達は ,「ちょっとだけ休憩させてください」 という患者さんの言葉に

「私 早番だから今じゃないといけないの」

と答えます。その患者さんは、大人でありながら 泣きながらおこり始めました。

結局 無理矢理検査を終えて、看護士さんは、部屋をでると

 「まったく○○さんは、すぐ騒ぐから・・」と言いました。

なんだか悲しくなりました。でもこの思いは、経験しないと分からないのだな・・と思いました。

そこで 

「血管が壊れてくると本当に辛いんです。だから すこし時間をおいてあげて下さい。」 

と訴えると 

「それは、私たちもプロだからよく分かってる、でも 私たちのシフト上 仕方がないのよ・・」

と言う答えが返って来ました。 次の方に引き継ぐことは、無理なのでしょうか・・

それ以上言えず、立ちつくしていると、「あなたもつらいなら がまんせず泣けばいいのに・・」といわれ

あまりに思いが、通じない悲しさに 力つきてしまいました。

 

この方達も悪気があるのでは、ないのです。むしろ一生懸命です。

時間もなく 人手も足りず、真夜中も昼も 働いています。

病院に住んでいるんでは?と思うほど自宅にいる時間も少ない様子です。

ただ患者の本当のつらさは、分からないのです。

 

小さい頃から私には、人が経験しないような出来事が

不思議なほどよくおこりました。

 それは、 「人に理解されない」 という 苦しみ を教えてくれました。

人に想いを伝えきれない、そう言う力もない自分への怒り、またあきらめもありました。

人は、人に認められ、支えられていると感じ 安心し 幸せを感じるんだと本当に思いました。

理解されないという事は、孤独です。人にとって孤独は、辛いのです。

 

そんなとき誰かが 「辛いでしょう。大変だったね。」と言ってくれると、心に灯りがともります。

そんなときは、「がんばれ」 という言葉が逆に冷たく心に突き刺さり 

1人突き放されたような気持ちになってしまう事もあるのです。

 

けれど、こういう時も なるべく自分に言い聞かせました。

この人も分からないだけ。

 

私もそうだったし、いまだって全ての人の気持ちが、理解できる訳じゃない・・

それでも 私に触れようとしてくれた。それだけで、ありがたいこと と。

 

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(そして最近の事。)

この数年後 我が娘(次女)にある転機がおきました。

それが、きっかけで、設けられた話し合いの中

数名の大人達の前で娘が叫びました。

「経験した者にしかわからない!」

この言葉を素直に叫んだ娘。

突然 言った言葉におどろきましたが、

この正直な気持ちが 少しでも誰かの心に響けばいいな と思いました。

自分ができなかった心の叫びを 娘は、素直に吐き出しました。

人に あきれられたかもしれないけれど 少なくとも私の心には、大きく響きました。

確かに口で言うだけでは、分かってもらえないかも知れないけれど

「追いやられた者の気持ちを簡単に 『当然わかっている』 と言わないで。

その言葉1つで 簡単に片づけてしまわないで。」 と言いたかったんだと思います。

 

私には、あの頃 その勇気がなかったんだ と気付かされました。

 

====== 続く =====

 

※これは、あくまで個人の記録です。病気の症状は、個人差が大きく、
同病の方であっても参考になるとは、限りません。
医療の専門家では、無いので、病気の正しい情報が欲しいときは、
医療のサイトなどで、検索して調べて下さい。
また同病の方、ストマなどのこと、私の経験で解る範囲のことは、
相談に乗りますので、メールして下さいね。

 

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